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冬の陽だまり [音楽]


年が明けました。元旦、2日と東京は穏やかな晴天です。窓からは冬の、短いけれど明るい日差しが入ってきます。大きな窓から冬の陽光が燦々と降り注ぐと、いつも思い出すこと・・・JAZZとの出会いです。
 
 
 
1970年代の東京のお正月は、今よりもっともっと町は静かで、コンビニエンス・ストアなどまだ無く、営業している外食産業としてはマクドナルドくらいしかなかったと思います。なので、各家庭では暮れのうちにそれなりの準備をしていないと食べるものにも困ってしまうようだったと思います。年始回りも済んで1月4日くらいになると、もう家にいるのが退屈で仕方ありません。しかし街に出ても、あらゆるお店はほとんどまだ営業していません。ティーン・エイジの放課後を過ごした御茶ノ水界隈も同様、大きな書店もまだ開いていません。
 
駿河台のマロニエの並木道を当て所なく歩いていると、PANというお店がやっていました。
そのお店は、駿河台から山の上ホテルの裏を通って猿楽町へと下りる坂道の入り口にありました。今思えばちょっと北欧デザインのような、白くて四角いエクステリア・インテリア。当時まだあまり見なかったオープンサンドウィッチのお店でした。学生の居ない正月休み中の閑散とした店内に入ってみると南西を向いた大きな窓からは冬の陽光が燦々と店内に降り注いでいました。
 
暖かい奥まった席につき、サンドウィッチとコーヒーをお願いし、待つ間・・・・
誰も居ない店内にはジャズが静かに流れていました。それまでクラシック・ギターやフルートなどで主にバロック期の音楽に親しんでいた僕は、ジャズとは気難しいオジサンが聞くものという先入観があり、あまり親しみやすいものではなかったのですが、そのとき流れていたピアノトリオの演奏は、印象的なメロディと和音ですんなりと心に入って来ました。正月休みのもてあました時間、冬とは思えない暖かく明るい北欧風の店内で聞くJAZZ・・・タバコの紫煙漂う薄暗い店内ですっかり冷めた酸っぱいコーヒーカップを前に眉根に皺を寄せて眼をつぶって黙って聴くというイメージとは正反対でした(笑)。
 
お店をあとにするときに、思い切って「今流れていた曲はなんていうのですか?」と店員さんに聞いてみました(当時、17歳くらいな自分には、かなり勇気がいることだったように思います)。店員さんは親切に、「そこにかけてあるレコードジャケットの曲ですよ。カナダ組曲。」と教えてくれました。オスカー・ピーターソン・トリオのカナダ組曲。後日、御茶ノ水のDisc Unionで見つけて早速購入したのは言うまでもありません。
 
それからオスカー・ピーターソンに限らず色々なJAZZを聴いてきましたが、はやり僕は、オスカー・ピーターソンのようなJAZZが好きなようです。カナダ組曲はもう何度聴いたことでしょう。中でも特に好きなのは7曲目の”March Past”。ううむ、日本語訳が難しいですね。こういうときの英語って、状況をスチル写真一枚で物語るような言い方ができるもんなあ。無理に訳すと「行進の過ぎ行く」(?)古語になってしまう(笑)。
他にもヴォーカルのエラ・フィッツジェラルドとの共演や、ミュージカルの「ウエスト・サイド・ストーリー」のJAZZ版などは、もう言うまでも無い名演と思います。最近NYで活躍中の日本の誇り・小曽根 真さんのピアノも大好きなのですが、最近の聞き及びによると、彼も少なからずオスカー・ピーターソンへの思いがあるようです。
 
3年ほど前だったと思いますが、Blue Note Tokyoでオスカー・ピーターソンのライブがありました。もう80歳を超えていたと思います。思ったより早く仕事が終わった雨の夜、キャンセル待ちでも聴けたら、と思ってBNTへ行って見ました。「立ち見でもよろしかったら・・・」と運良く見ることが出来たそのライブは、正直に言って音楽を聴くという意味ではほとんど意味がありませんでした。JAZZの巨匠はもう自力で歩いてステージに上がる力もなく、車椅子を使っていました。往年のあの和音はそこかしこにちりばめられていましたが、メロディはほとんどギターに任せている状態。ちょっと見ていて痛々しいな、と思ってしまいました。かつて昭和女子大人見記念講堂で聞いたヴァイオリンの名手、イェフディ・メニューヒンさんのコンサートでも、ちょっとそう感じてしまったのを思い出します。巨匠たちの往年の素晴らしさをレコードなどで十分知っているからこそ、老いた彼らを見るのがちょっと痛々しいと思ってしまったのです。でも、それでも、今思えばやはり彼らの生の姿を見ることができて良かったと思っていますが。

昨年暮れ、12月23日にオスカー・ピーターソンは故郷のカナダで亡くなったそうです。 
 
 
 
 
 
 


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コメント 1

ino

明けましてオメデトウございます。本年も宜しくお願いします。

さて、O・ピーターソンさん、亡くなられましたね。
オイラの世代では、ややスタンダードジャズ的な位置づけですが巨匠ですな。

賛否分かれるところですが、死ぬまで現役か、程よきところで引退か・・
わたしゃ古いBNT時代しか、行った事がないのですが、痛い音は勘弁でつ。

とは云っても、ジャコパのように早死にも困りますが・・・
by ino (2008-01-03 12:15) 

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